論 考

フランスの統一年金構想

 フランスのマクロン大統領が、現在、職業別個別制度の年金を統一年金に改編する計画を導入するのに抗議して、9月13日、パリ交通公団RATPの地下鉄勤務労働者がストライキした。16路線中の10路線を全面ストップさせた。

 統一年金になると、勤務年限が長くなる。仕事が厳しいので、RATP労働者は年金で優遇されている。フランスでは一般労働者の定年退職は平均63歳であるが、RATP労働者の場合は平均55.7歳だという。

 これは、確かに大きい変更になるし、RATP労働者にとっては労働条件が大きく低下するからストライキの理由は十分にわかる。

 また、高齢社会を前提し、国民全体の年金制度で老後生活を安定させるという統一年金構想は十分に意味がある。

 日本では1960年代まで、退職金(年金)は老後保障と在職中賃金の後払いの2つの柱であった。それが次第に、老後生活保障へと整理されて今日に至っている。RATP労働者の場合、在職中労働条件の後払い的性格が強いようだ。

 マクロン政権の支持は、発足当時と比較すると大きく下落しているが、政府・RATP経営者・RATP労働者の3者が、課題をどのように煮詰めていくか。フランス的デモクラシーの展開に、わたしは興味をそそられる。