論 考

デモクラシーの質についての鑑

 英ジョンソン首相は、なにがなんでもEU離脱を10月31日に実現するという戦略を押し出した。

 英議会のEU離脱派は、なにがなんでも離脱派と、離脱は賛成だが合意なしに反対派の2つの流れがある。これに離脱反対派を合わせると3派ある。

 メイ前首相は、結局、複雑に入り組んだ3派によって、EUとの間でまとめた離脱案の議会合意を得られなかった。

 だから、ジョンソン氏が「離脱」だけに絞って中央突破を図ろうとした作戦は1つの見識である。

 ところが、目論見が外れて、離脱賛成・合意なし離脱反対派を「離脱」へ一本化できなかった。合意なし離脱反対派が、離脱反対派と一緒になっているのがいまの議会の事情である。

 議会を閉会して審議させない戦略に対して、熟議を旨とする議員が怒った。議会は首相の手駒ではない。重大な問題だからもめているのに、グレートブリテンの幻想を抱いて暴走するような首相には従えないとする。

 ジョンソン流の解散はほぼ封じられた。とすれば、残るのは再度の国民投票という展開が予想できる。

 なぜなら、最初の国民投票は「離脱か否か」を問うただけである。しかし、この3年間にわたる審議を通じて、「合意なし」ならば離脱に反対だという意思表示がなされた。いわば、新しい事態だともいえる。

 もう一つの大きな問題は、国民の議会政治への信頼が失墜したことだ。つまり、解散総選挙をしても活路が開かないだろうという見方である。

 英国的デモクラシーの質の維持ができるか否か。

 遠い英国の話として傍観するだけではなく、わが国のデモクラシーを考える。