論 考

熟慮欠く情実外交

 安倍・プーチン会談を整理する。

 昨年、プーチン氏が「前提条件なしの平和条約締結」を提案した。次に、1956年の日ソ共同宣言を基礎にしようという提案があり、安倍氏は応諾した。

 安倍氏は、歯舞・色丹は必ず返還されると思い込んだのであろう。この流れにおいて、日本が主張してきた「四島返還」論は消えた。

 ところで、歯舞・色丹返還の時期についても、当時ソ連は、「アメリカが日本に沖縄を返還する時」という条件を持ち出している。その真意は日本の米軍基地機能を嫌ったからである。

 その後プーチン氏は、北方領土は第二次世界大戦の結果、合法的にロシアが領有していると主張した。この理屈でいけば、「四島返還」どころか歯舞・色丹も返還する必要はないというわけだ。

 歯舞・色丹の「二島返還」をちらちらさせるが、返還する気はない。議論が煮詰まらないのに、こちらの思い込みで「四島返還」論を下ろすのは危険だという指摘が現実化した。

 要するに、安倍・プーチン会談27回の成果! は、日本が「四島返還」論を下ろしたということで、日本としては後退した。

 さらにいえば、地政学的理屈から、歯舞・色丹が安保条約適用範囲に入ることからして、目下のロシアがおいそれと返還するわけがない。

 安倍氏が、国内権力維持のために外交で人気を獲得しようというような歪んだ考え方が、相手方に見透かされている。

 日ロ外交について、ぜひとも、じっくりと経緯を説明してもらいたい。