論 考

パワハラをなくする視点

 以前の雇用対策法が、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」という長ったらしい名前の法律に改正された。

 とくに、事業主にパワハラ防止措置を義務付けたのが特徴である。パワハラを防止するための措置を義務付けたのであって、パワハラ行為の禁止規定ではない。そもそも法律ができただけで違反がなくなるわけではない。

 また、罰則がない。もちろん、罰則付きの法律ができても違反がなくなるわけではない。

 それ以上に、わたしが考えるのは、パワハラは原因ではなく1つの結果であるから、本気でパワハラをなくすためには、原因を考えなければならない。

 会社組織は、上意下達主義である。1人ひとりのイニシアチブを前提としていない。そこに指示・命令する側の絶対的優位性が発生する。

 ちょっと極端であるが、旧軍隊内部の上下関係を思い出せば、「将校は下士官を殴り、下士官は上等兵を殴り、上等兵は二等兵を殴る。二等兵は馬に当たる」といった。

 会社組織において指示・命令することは、仕事を効果的におこなうためであって、人格の上下関係を意味しているのではない。いまだ、この原則が理解できない人が少なくない。

 概してパワハラをする連中は、上には弱い。「卑怯なものは刃を抜いて、自分より弱いものに向かっていく」ともいう。

 本気でパワハラをなくするためには、組織風土を改良しなければならない。職場が、愉快に共同作業できる雰囲気になっているだろうか。

 上下関係だけではない。お互いに自由闊達に意思表示できているだろうか。世間の組織一般はコミュニケーションがよろしくない。これを放置して、ただ法律を盾にしても問題解決はできない。

 紙に書かれた法律に依存するのではなく、自分たちの職場を自分たちで上等なものにしていくという基本姿勢こそが大切だ。