論 考

戦争は自分の問題である

 敗戦の日だ。

 終戦というニュートラルな言葉は、当事者には似つかわしくない。

 鈴木大拙(1870~1966)の「降参したのに、日本人は真実に直面したくないから、終戦という言葉に置き換える」という指摘は大切である。

 痛みを忘れるなという論調が多いが、痛みは結果である。痛みは、時が経てば忘れるのが当り前だ。

 もっと大事なことは原因をきちんと押さえて忘れない。二度と繰り返さぬように努めねばならない。1人ひとりが心に刻んで行動せねばならない。

 そうでなければ、――歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として――という次第になる。

 終戦というが、戦争は天変地異ではない。戦争を決断し、人々を動員し、破壊と殺戮の悲惨を15年にわたって続けさせた国家指導者たちと、それに従った人々による愚行である。

 戦争を体験してない世代であっても、自分を当時の世代の1人として考えねばならない。

 敗戦を忘れまい。