論 考

アメリカが世界の危機を加速する

 米財務省が、8月5日、中国を為替操作国に認定した。

 ロイターによると、これに対してIMF当局もG7当局も論評を避けている。中国が為替操作国だと断定するのは無理だという判断である。

 また、G7は、メンバー国が為替に関して重大な措置を取る場合は他のメンバー国と連絡(根回し)しなければならないことになっているが、今回、アメリカはそれをやっていない。

 トランプ流の衝動的かつ政治的な行動だというのが常識的な見方である。

 トランプ流は、とにかく手あたり次第に敵を作っては叩く。大国だから、二国間関係に限定すれば、敵とされた国は立場が弱い。

 中国はアメリカにとっても手強い。次々に経済制裁を打ち出す背景には、アメリカ人の中国嫌いが高まっている事情がある。いわば中国叩きは多数派の支持が得られるわけだ。

 しかし、1980年代後半に日本が叩かれたのとはスケールが異なる。経済問題だけではない、米中関係が極めて不安定化しつつある。

 トランプ政権は、「力の政治」を信奉しているが、危なくて仕方がない。アメリカは2度の世界大戦でも本土が戦禍を被っていない。そのありがたさを理解せず、世界中を危機に巻き込もうとしている。

 わが国では1970年代くらいまで、アメリカ「世界の警察官」論は間違いだという世論が強かった。80年代後半からアメリカべったり派が前面に出てきた。無定見、ご都合主義の世論が主流になっていることを、わたしは深く危惧する。