論 考

モディ首相の火遊び

 カシミール地方は、もともと藩王国であった。藩王国とは、イギリス領インド政府の保護下にあり、半独立的王侯領である。

 1947年、インド独立とインド・パキスタン分離の際、イスラム教徒の多数派住民はパキスタンへの帰属を望んだが、ヒンズー教徒の王侯がインドへの帰属を求めた。以来、インドとパキスタンの間で紛争が耐えない。

 対立を抑える目的で、カシミールを自治領としていたのであるが、先日、インドが自治権をはく奪して、直接統治に乗り出した。インド・パキスタン間の緊張が一挙に高まった。

 この5月23日開票された下院選挙で、1月時点では苦戦必至とみられていたモディ首相の人民党・国民民主連合が予想を覆して圧勝した。

 2月末、インドはテロ対策名目でパキスタン領内を空爆した。そのとき捕虜になったインド機の操縦士を3月にパキスタンが解放し、緊張が緩和されたのであるが、この空爆でモディ首相の支持率が反転したとの見方が強い。

 与党は下院で圧勝したが、上院は議席245中、与党102であり、野党が上回っている。雇用と所得問題でモディ政権は人気を落とした。

 カシミール地方に対するヒンズー教徒のナショナリズムを煽って、人気回復と上昇を図ろうとするようにしかみえない。危ない。