論 考

無定見外交の迷走

 6月12日から14日、安倍氏がイランを訪問して、イラン核合意の支持と、中東地域の緊張緩和を主張した。

 当時の社説は、「時期生かして緊張緩和を」(毎日6/13)、「次は米大統領の説得を」(朝日6/14)、「緊張緩和への歩みを進めたい」(読売6/14)、「聞き取った懸念を米国に」(毎日6/14)などである。

 日本政府の立場は、アメリカとは明らかに異なっているはずだが、以降、日本政府がアメリカを緊張緩和の方向へ説得したという話は聞こえていない。

 アメリカは、イラン核合意離脱が正しいことを立証するために、次々に緊張を高める手立てを繰り出した。その1つがホルムズ海峡タンカー護衛の有志連合の呼びかけである。

 有志とは、ある事柄についての関心やそれに関する意志をもっている意味である。アメリカ呼びかけの有志連合に参加するのは、アメリカと同じ意志をもつことを意味する。

 ホルムズ海峡から遠く離れたイエメン沖に自衛隊を派遣するという案が検討されているらしい。いかにも、日本的「おつきあい」による恰好つけ作戦である。イエメン沖であろうと、有志連合と歩調を合わせるのであれば、それは、安倍氏がイラン訪問で語ったことが本気でなかったことになる。

 イランに対しては面目丸つぶれだ。

 7月9日の本コーナーで、「安倍イラン訪問は何だったのか」と書いたが、有志連合に参加するのであれば、前後の見境もなく、形式的な外交をやっていると批判されても仕方がない。