論 考

やせガエル負けるな

 首相の動向は日々に報道される。選挙戦で遊説の記録をみると、練り歩きや、たまたまの握手も報じられる。

 ところが予定を報道へ連絡するのは前日だ。もちろん遊説先とは早くから打ち合わせしているのだから、意図的な作戦である。早々遊説先がわかると妨害する! けしからん連中に利するというのだが、野次は議会の華だとする百戦錬磨の政治家らしくない。

 朝日社説は、これを政権党の度量がないと批判する。批判されても仕方がなかろう。

 ところで、野党の報道は少ない。もちろん、報道されていなくても野党のみなさんが走り回っているのはわかっているが、選挙遊説に関しては、選挙戦に臨んでいるすべての党首の動向を首相同様に報ずるべきだ。

 今回の選挙戦の焦点の1つは、野党共闘である。野党共闘がどんな具合に進んでいるか。報道にはもっと意識的に取材してもらいたい。

 明治維新では、「勝てば官軍」という言葉があった。大正以後は「勝つは官軍」と言った。なぜなら政府与党が全機関を挙げて選挙を戦う。権力の強みを存分に駆使して、野党を抑え込んだ。

 昨今、さすがに官憲が「弁士中止」などとはやらないけれども、客観的に野党の選挙戦のしんどさには同情を禁じ得ない。

 報道による景気のよろしい与党と、目立たない野党という舞台背景もまた作られたものだという想像力を働かせなければならない。

 少なくとも選挙公報では各党互角の戦いだ。ついでに、失礼ながら、泡まつ候補のみなさんの立候補の弁には個性が満ち満ちていて一種の爽快感をもつ。

 あと数日、野党のみなさんには「ひたすら」「愚直に」「精神誠意」のスピリットで走り抜いていただきたい。野党の揃い踏みが成功するように期待する。

 <追伸> 「弁士中止」はないと書いたが、15日の札幌市中央区の安倍氏演説で野次を飛ばした人が、道警数人に囲まれて直ちに排除されたそうだ。権力の濫用だ。