論 考

フランス革命の火種

 ノートルダム寺院火災事故で、17日までに1,000億円強の寄付が集まった。

 黄色いベスト運動で悩むマクロン氏が「この大惨事を(国民的)結束の機会にする必要がある」とスピーチした流れにあると思いきや、財閥の巨額寄付にまず批判が沸いた。巨額の税額控除があるからだ、というだけではない。

 社会保障や気候変動対策など現代社会が直面する大きな課題を指摘する声について、ひねくれ者の小唄と切って捨てるわけにはいかない。

 もともとフランス人は寄付しないことで知られている。とくに金持ちほどケチである。彼らの考え方は、社会的問題は政府に責任ありとする。だから、救恤に頼るのは本来正しくないとする真っ当な主張である。

 1789年のフランス革命は誰でも知っているだろう。それは、「貴族+聖職者」対「ブルジョワ+労働者」の戦いで、「ブルジョワ+労働者」が勝利して、封建社会に鉄槌を下した。

 その後、イギリスに次いで開始した産業革命でブルジョワはますます力をつけるが、労働者の生活はそれに反比例してどんどん下降していった。1848年の2月革命、1871年のパリコミューンは、「労働者」対「ブルジョワ+聖職者」の戦いであった。

 パリコミューンでは1万7千人が殺害されて労働者が敗北した。

 ノートルダム寺院火災事故は、いまも脈々と流れている歴史の底流意識を浮上させたのかもしれない。