論 考

夢が大事だ

 EUのトゥスク大統領がEU議会で「イギリスがEUからの離脱を断念するという夢を捨てない」「運命に屈することはできない。チャンスはある」と語った。トゥスク大統領の持論であるが、この言葉は素晴らしい。

 欧州においては、15世紀あたりから先見的開明的な人々が、常に「欧州国」の夢を語り続けてきた。

 国なるものは確かに大昔から続いてきているが、現実に、人やモノ・カネが国境を超えて動き回っている現代において、国境の壁に拘る精神がいかに遅れたものか。素直に考えれば誰にでもわかる。

 デモクラシーは1人ひとりの人権を基盤とした制度である。ならば、国境に拘ることはない。国境に拘るのは、煎じ詰めれば、時間を逆転させたい人々の考え方である。

 もし、国境がなければ、ナショナリズムのきな臭さはなくなる。戦争は国家間で行われるのだから戦争がなくなる。戦争がなくなれば、軍備武器に莫大な資金や資材をつぎ込む必要もない。

 もちろん、これは夢物語みたいであるが、戦争をなくするために戦争の準備をするという救いがたい思想の基盤が崩される。

 地球資源は有限だ。いかにこれから科学技術が進歩するとしても、地球人口70億人が生存するためには、無駄でかつ巨大な軍備武器に人々の知恵を投入して資源を無駄遣いする余裕はない。

 相変わらず東アジアは遅れているが、EUの存在とその帰趨は世界の希望である。