論 考

出直しが最善ではないのか

 イギリスのEU離脱問題がギリギリの時点に至った。2016年6月23日の国民投票では、得票率51.89%対38.11%で、離脱が決まった。

 離脱派が大声疾呼した、抜ければNHS(国民保健サービス)へ毎週3.5億ポンドを投入できるという内容がでたらめであったことがわかって、27日には国民投票やり直しを求める400万人の署名が集まった。

 年明けの17年1月8日に、EU離脱のためには、国民投票だけではなく議会の承認が必要だという最高裁の裁定が出された。

 EUとの交渉はなかなか形にならず、ようやく、18年11月25日に、メイ首相とEUの離脱協定案がまとまった。

 19年3月29日を離脱日とし、20年12月31日までを離脱移行期間とする。懸案だった離脱金は390億ポンド(5.6兆円)で、当初は600億ユーロ(7.3兆円)当たりが予想されていた。

 離脱日が迫るなかで、北アイルランドとアイルランドの国境の通関問題の扱いが議会側の円満な合意に至らず、というか、この時点で、国民投票を二分した離脱か残留かの論点が浮上したのである。

 メイ首相は17年3月末には、「EUと合意できなくても、悪い条件で合意するよりましだ」とも語った。氏が、よい合意だと思うものが議会の賛成を得られないのだから、問題の本質ははっきりしている。