論 考

恥の認識

 金正恩氏は、大国アメリカの大統領が叩く大口の空疎さをつくづく認識させられただろう。

 仮に首脳同士が心底共感したとしても、それだけでは事態を決定的に動かしえない事実に直面したわけだ。

 一方、父親時代に果たしえなかった事態を動かして、短期間に2度の首脳会談にこぎつけた事実は過小評価するべきではない。

 同時にハリネズミ戦略の限界を認識したであろう。

 権力者が国内政治のリーダーシップ行使のために外交をコマ扱いするのは邪道である。外交は継続によって相互信頼関係を構築するものだ。

 日本の植民地から解放されて75年が過ぎたのに、朝鮮半島の人々との間に建設的関係が構築されないのも、真っ当な外交を歩んでいないからだ。

 東アジアの各国が、いつまでたっても心を開いたお付き合いができない事実を、私は日本人の1人として痛切に恥じる。