スーザン・ストレンジ(1923~1998)が、『カジノ資本主義』を発表したのは1986年であった。
日本は土地バブルの真っただ中で、一般にはほとんど注目されなかった。
同書には衝撃的な表現が少なくない。たとえば、
「金融カジノの元締めが大銀行と大ブローカーである」
「将来何が起こるかは全く運によって左右される」
「自由な民主社会が最終的に依拠している倫理的価値への信頼が揺らぐ」
それが現実になったのが2008年の米国発金融危機であった。サブプライム・ローンというねずみ講は、格付けがAAAであり、米国流金融技術があたかも錬金術のごとくであった。
スーザンは米国的国際戦略の危険性にも触れた。
「米国は覇権安定理論である」から、世界の秩序をわがもの顔に振り回す。また、それが国内的には「特殊な利害関係者によって」なされている。
これは、もちろんトランプ以前からである。そして、カジノ王・トランプの登場によってその露骨さが一層明確になった。
おそらく、現代は、第二次世界大戦後の世界が、啓蒙の大切さを失念して、神話の時代に向かって限りなく驀進した時代として、後々に記録されるように、わたしは思う。