論 考

使嗾的デマゴーグ

 トランプ氏が2017年1月20日に大統領就任以来、この9月16日までの601日間に、嘘もしくは一部事実でない言動をした回数が5,000回を記録した。(CNN)

 半端でない。「You are a liar」(常習的嘘つき)である。

 モラー特別検査官が大統領選に関するロシア介入疑惑を着々調査している。氏の国民的支持は高い。

 トランプ氏の嘘発言がモラー氏の調査の進展によって益々増加している傾向もあるが、やはり、天性の! ものだと思われる。

 1950年から54年まで、米国では「マッカーシー旋風」が吹き荒れた。

 政治的に「反共産主義」の気風が強い中で、官僚や政治的要人が、共産主義シンパの疑惑で次々にスケープゴートにされた。

 マッカーシー上院議員(1908~1957)が糾弾した人々に対する疑惑のほとんどが、嘘ないし捏造によるものであった。

 そして、ある日突然! マッカーシーは虚構が破綻して終末を迎えた。

 ニューヨーカー記者のR・H・ローピア著『マッカーシズム』に書き残されたマッカーシーの人物評価を以下に記そう。いわく、

 ――ニヒリスト、破壊者、政治的ビジョンまったくなし、反逆者、絶叫者、アウトロー(ごろつき)、群衆操縦家、恐怖心の利用者、喧噪に頼る、嘘つきチャンピオン、酒豪、残忍で無邪気、我執――

 トランプ氏がマッカーシーと明確に違うのは酒豪でないだけだ。

 いや、マッカーシーは上院議員の1人だったが、トランプ氏は大統領である。