論 考

包摂という手品

 「包摂」という言葉がある。

 1つの事柄・問題を一定の範囲に包み込む意味である。たとえば包摂社会という使われ方をする。たぶん使う人は、さまざまな人々の期待や要求を全体で包み込むと言いたいのであろうが、実際は、何がなんだかわからない。

 もともと日本人は、あれもこれも、全部まとめて面倒見るよというまとめ方に、なんとなく納得してきた傾向がある。

 議論伯仲して、まとめ役が「うん、それはわかる。あれもわかる。総合的に検討して解決しよう」というような手品である。

 要するに、問題先送り、その場を納めるだけで、何も解決しない。

 沖縄知事選が始まった。自民党候補は「対立・分断から対話へ」と高唱するが、対立・分断の原因についてまったく言及しない。

 これぞ包摂の口先手品である。