論 考

思いつきに対する思いつき

 ロシア主催の東方経済フォーラムで、プーチン氏が、思いつきだとして「前提条件なしで年内に(日ロ)平和条約を締結しよう」と発言した。

 なるほど、思いつきである。

 ロシアは、米国のミサイル防衛を含めた東アジア地域の軍事協力(日米韓)について懸念をもつことを一貫して広言している。10日の安倍・プーチン会談でもはっきり言っている。

 日本政府は、北方地域での経済協力は一歩一歩着実に進んでいると言うが、実はたいした進展はない。ロシアは経済協力に期待するから、それによってよろしい関係を構築して、領土問題解決へという日本側の期待にまともに向き合っている様子はうかがえない。

 日本政府の対ロ方針は、旧日本軍が、自分に都合のよいケーススタディばかりやっていたのと、よく似ている。

 ソ連解体後のロシアの政治力は軍事力を基幹としたものであり、その最大の狙いは、ロ中米の3国関係をいかにロシアに有利にするかにあって、米国に追従するしか能のない日本に北方領土返還というお宝を提供することに意義を感じているとは考えられない。

 日本の米国追従路線が不変であれば、馬の鼻先にニンジンをぶら下げているかのごとき素振りをする。という辺りが、ここしばらくのプーチン的交渉術ではなかったか。

 領土問題が解決しなければ平和条約を締結しないという日本の姿勢に対して、「ダメだ」と明確な意思表示をしたことになる。

 そもそもロシア外交戦略からして、北方領土問題の順位は低いのである。そんなことは日本政府は、わかっていたはずだと思うが。