論 考

未熟な人格と権力

 「と、日記には書いておこう」という言葉がちょっと流行ったことがある。

 好きな子に声を掛けたいのだが、結局、肘鉄が恐くて声を掛けなかった。しかし、日記には他によんどころない事情ができたから止めたのだ、というような取り繕いである。

 他人に見せるものではないから、何を書いても構わないし、何を書いても、本当のところは自分がきっちり知っているのだから、情けないと言えば情けないし、かわいいと思えばかわいいものでもある。

 しかし、昨今話題の公文書を巡る政府の欺瞞的態度はそうはいかない。

 事実を事実として記録しないで、改ざんしたり、隠匿したりするのは、政治家・官僚が、国政を預かる倫理道徳を持ち合わせず、「自分中心主義」でしか、政治をおこなえないという本質的欠陥を露呈させた。

 これをデモクラシーの危機というのは当然である。

 同時に、この連中は、学生時代から成績優秀だったかも知れないが、実は、単なる点取り虫になっていたわけで、人格が真っ当に育っていないのでもある。

 かくなれば、政体がデモクラシーであろうと、国家主義であろうと、いずれにしても国家を破壊しつつある。仮想国ゲームにのめり込んで大きな犯罪をやった連中と本質的には同じだという理屈になる。