論 考

危機の時代

 オバマ氏は、世界秩序にアメリカが貢献するのは好んだが、アメリカによる世界支配的となることにブレーキを掛けようとした。そのために、とりわけ共和党の反発で大統領2期目後半は一種の政治的膠着状態にあった。

 トランプ氏は、世界秩序にアメリカが貢献することよりも、アメリカの主として経済的利益を最大獲得することに政権舵取りの主眼を置いて、それを露骨に推進してきた。

 オバマ氏は理想を展望しつつ、中長期的に外交を推進しようした。トランプ氏は理想などは関心外である。現実主義というよりも、目の前の(自分自身の)利害得失で行動する。

 オバマ氏が政治には哲学が不可欠だという見識であるが、トランプ氏は権力奪取・維持にしか関心がない。

 オバマ氏がグローバリズムを前進させようとしたが、トランプ氏はユニラテラリズム(一方的外交政策)である。

 このまま行けば、アメリカ外交が国際的支持を失うのは間違いない。

 政治は、煎じ詰めれば「権力対道義」のせめぎ合いである。わたしたちが、内外に異常な時代を生きていることだけは間違いない。『危機の二十年』(E.H.カー)と、世界が重なってみえる。