論 考

わたしの矜持

 53年前のこと。わたしは組合支部役員に立候補した。定員3人に5人立候補で激戦だ。しかも入社2年の丁稚みたいな存在なので落選必至と予想されていたのだが、2位に肉薄、次点を大差で引き離して当選した。

 実は、わたしは長期出張していて自身はほとんど選挙運動をしなかった。若い仲間がごそごそ動いてくれた。なぜ当選したのかは、厳密なところは当時わからなかったし、いまも想像するしかない。

 当選した際、尊敬する副委員長が「下っ端の役員とても権力機構の1人だということを絶対に忘れてはいけないよ」と諭された。時が過ぎるにしがって、この言葉は心にしみて、自分では肉体化していると思う。

 大人物は権力の罠に嵌らない。だから大人物なのである。小物は、舞い上がり、実力を見誤り、ともすれば職権乱用をしてしまう。

 たかだか組合員2千人の支部の組合役員の初心ではあるが、安倍氏並びにその取り巻き、それに追従して恥じない官僚諸君のザマとは絶対に違う。

 わたしが尊敬して止まない先輩のような市井の偉人に薫陶を受けられなかった諸君をお気の毒に思うが、その堕落については絶対に許さない。