論 考

憲法を暮らしに生かす

 社会保障と税の一体改革が、民主党政権末期時代に盛んに主張されたが、自民党が政権復帰して以来は「なしのつぶて」状態だ。

 うがった見方をすれば、当時は民主党潰しのために、難題をふっかけ、自民党が政権に復帰するや、知らんふりをする。まことに高等戦術である。

 それもそのはず、この課題に本気で取り組むのは、まさに人々の幸福を保障するための国の根本的な在り方を論議することになる。

 功利主義を前提とすれば、社会保障(憲法論にいう社会権)が疎んじられるのは必然であり、すなわち、それは自民党的保守政治の否定に通ずる。

 憲法第9条関連だけではなく、日本国憲法の精神と照らし合わせてみると、自民党的政治というものは、まことに根本的な問題を抱えているというべきだ。

 「憲法を暮らしに生かす」ことを正面に掲げたのは、蜷川虎三元京都府知事であったが、その慧眼に学ばねばならないと改めて痛感する。