ある大学名誉教授の先生が、「小中学校の勉強をきちんとこなせば、社会を立派に渡っていける」と話された。
歓談盛り上がっているなかで、ちょいと顔を出した言葉なのだが、わたしは、真理を突いている言葉だと思う。
つまり、基礎——人間としての品位や、社会的に必要な知識・技能・技術を、小中学校で学ぶかどうかが大事だ。
幼稚園から大学入試のための予備校と化すようでは、知識などはたくさん入手するとしても、人間としていかに生きるかについて、熟慮するような態度は育ちにくいのではあるまいか。
吉野源三郎さん(1899~1981)の『君たちはどう生きるか』の主人公コペルくんは、中学校1年生として描かれた。わたしは小学校5年生のとき、母からもらって読んだけれど、いまも、折々に思い出す。
日本人には、欧州の宗教改革、ルネサンス、啓蒙主義の思想的文脈が欠落している。つまり、デモクラシーの畑の耕し方が不足している。