筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
トランプが、アメリカによるグリーンランド領有に応じない国には追加関税をかけると発表した。2月1日から10%、6月1日から25%だと恫喝する。とても常識では理解できないことばかり押し出してくる。槍玉に上げているのが、デンマーク・ノルウェー・スウェーデン・イギリス・ドイツ・オランダ・フランス・フィンランドだ。
今回は、共和党議員にも反対が出ているし、国民の75%が反対というCNNの意識調査もある。ただし、トランプが止める可能性は見当たらない。読売社説(1/18)が批判したように、時代錯誤のトランプ政策だが、何を言ってもトランプには届かない。まことに腹立たしい。
アメリカ国民が本気で反対の意思表示をするかどうか。アメリカ的民主主義のよいところは、座して権力悪に共犯しないはずであるが、どうも対外侵略的行為には無関心が多い。経営者筋は、儲かるか否かが判断基準で、損しなければトランプと喧嘩してエネルギーを使いたくないだろう。座して共犯者である。
思えば、アメリカが民主主義の旗手として登場したのは第二次世界大戦の独伊日のファシズム、全体主義に対する戦いであった。しかし、その後は次第に本性を露呈することが多かった。たとえば、ベトナム戦争、イラク戦争、アフガン戦争などだが、カリブ海諸国に対しては絶え間なく介入・侵略的行為を継続してきた。理由は、トランプ以前から自国第一主義であり、覇権維持のためである。
アメリカの外交パターンは、1863年、ペリーが艦隊を引き連れて浦賀に来航した時と同じ、砲艦外交である。イエスかノーか、脅して目的を達成する。自分の利得のために相手を踏みにじっても当然という思想は、先住民を放逐し、領地獲得のために狂奔した17世紀から変わらない。
トランプにすれば、自分はまさにアメリカ思想! の伝道者のつもりだろう。時代錯誤という批判は全く通じないのである。アメリカ人は善人が多いと思いたいが、対外侵略は活性化している伝統であると言わざるを得ない。
人間は存在論的ケンタウロスだと主張したのは、オルテガであるが、トランプは狂暴凶悪の半人半獣である。この半人は、論理が通用するおつむではない。グリーンランド領有論は、すでに、トランプがプーチンとまったく同じ考えだという証明である。
なにごともアメリカが参加しない国際協調は成立しないという考え方にこだわっても無意味である。本人が、力による正義論を唱える限り、それに同調するならば、世界は暴力団が支配する無法地帯である。力による正義論は、決して平和構築の礎にはならない。不肖わたしは、ヤクザにみかじめ料を払って無事を守ってもらうような破廉恥な気分になれない。だから、国家権力を非道に駆使するような大統領の横でミーハーするような人物に好感を持てるわけがない。
