NO.1645
アメリカの大統領報道官レビットが、12月11日の記者会見で、日中がレーダー照射問題でごたごたしているのを念頭に、「トランプ大統領は、アメリカが日本との強固な同盟関係を維持しつつ、中国とも良好な関係を築くべきだと考えている」と語った。
記者会見の内容はいろいろ考えさせられる。トランプは対中貿易交渉に成果を出したいし、訪中を控えていることもあるが、まったくレーダー照射問題に触れなかった。おそらくつまらんトラブルを引き起こすなと思っているだろう。
高市発言は軽率なだけではなく、先走って中国に脅しをかけたのと等しい。台湾をやってみろ、直ちに反撃するぞというわけだ。かりに中国が台湾へ武力進出したと考える。台湾がアメリカに支援要請する、それに応えてアメリカが武力行使に踏み切る。アメリカが日本に支援を要請する。そこで直接攻撃されてもいない日本がどうするかという手順になるが、それが全く考慮されていない。
下衆なたとえをすれば、親分同氏は匕首をちらつかせつつも笑顔たんまりで握手するのに、日本は三下鉄砲玉よろしく飛び出しかねない権幕だ。高市発言から察するに、平和国家をめざす憲法観がまるでない。自分の言葉で語るのは結構だが、手順を考慮しないのでは、棟梁失格、これでは平和という建物は建てられない。
日本がアメリカと同盟しているのは、積極的に中国を叩きたいためではない。平和国家を希求しているが国防に非力だから、日本に基地を置きたいアメリカに基地を提供しつつ、見返りに日本の安全を支援してもらうためである。アベ信者だけあって、日本の苦い歴史を考えたこともないみたいだ。サナエあれば憂いあり。
アメリカ第一が席巻しているが、傍目には、アメリカは内部瓦解へ進んでいるとしか思えない。トランプという破格の人物が、大統領権限を闇雲に暴発乱用しているが、それは瓦解の原因ではない。アメリカ国内の混乱がトランプ大統領を生み、トランプはその混乱を整理整頓する気がない。ひたすら強欲不動産屋の成り上がりらしく、混乱こそ大儲けの好機とばかり蠢いている。
もともとアメリカの個人主義は、私有財産拡大に最大の関心を持っている。人種差別も激しい。リベラル先進国の印象は、1960年代、人種差別に立ち上がった公民権運動が切り開いてきたからである。儲け主義の白人至上主義は、いわば本音のアメリカである。これがしばらく抑えられていたが、異常な格差大国となり、国内の混乱が高まり、トランプがそれに拍車をかけている。
敗戦後80年の日本が見ていたアメリカは、ユートピアである。占領下で、日本に民主主義を持ち込んだ人々は、アメリカ人の中でもいちばんの民主主義者たちであった。だから日本国憲法の出来がよろしい。これが日本の民主主義革命であり、棚からボタモチという僥倖である。僥倖は永遠には保証されない。
日本はそれまで一億一心、ガチガチの帝国主義である。民主主義になっても、いまもその精神的氷塊は残っている。たとえば民法において遺制を残そうとする動きが絶えない。戦前支配層の意識もまたしたたかに生き残る。官僚体制はかつてパージされず、無傷で生き残った。官僚がもっとも保守的だという所以だ。
戦後80年の民主主義の歩みは跛行の繰り返しだ。そのなかで、一つはアメリカンデモクラシーに対する幻想が固まった。アメリカの上等な部分に憧れるのはいいが、クソもミソも一緒ではダメだ。もう一つは、アジアの見方がお粗末極まりない。かつてイエローヤンキーと批判されたが、そのままだ。
トランプは幻滅のアメリカを露出した。日本に「負」の国の姿を見せている。せっかくの反面教師である。三下鉄砲玉から更生! するべき大きなチャンスが訪れていることをしっかり認識したい。
