週刊RO通信

冷めた視線、皮肉な出発

NO.1635

 自民党総裁選挙は、10月4日が投開票日であった。7月20日参議院議員選挙以来、始まった与党内部の混乱が一応決着したことになる。

 女性初の自民党総裁であり、女性が初の首相に就任することが予想されるが、ガラスの天井を破ったという表現が空回りする。社会が成熟した結果というよりも、女性初を強調しても、人々の視線が冷めているようだ。

 今回の総裁選は、以前のように自民党総裁即首相という空気ではない。厳しく言えば、自民党は沈没してもおかしくない船、あるいは泥沼にはまってずぶずぶ沈みつつあり、身動きできない状態にある。

 そのピンチを脱出する人物を選ぶ総裁選の立候補者5人は、いずれも前回総裁選の候補者であり、本人の意気・意欲はともかくとして、選ぶ側から見て新鮮味がない。すでに自民党は人材が枯渇したと評されていたが、実際その通りで、意外性や選びがいらしきものがない。在庫一掃の感であった。

 それでも5人は目下自民党の代表選手であり、党員・党友の選択を獲得するために競うのだから、盛り上がると思ったが、そうでもない。候補者諸氏がどなたも徹底して慎重運転を心がけ、相互謙譲の精神に満ちていたからというよりも、やはり党員諸氏も冷めていたのであろう。

 わたしは党員ではないから勝手な御託を並べると、選挙結果から読み取るのは、水は低きに流れるという気持ちだ。自民党再建の本旨は、選挙に敗北した技術論ではなく、国政を左右する政権党として、国民の批判に応えることだろうが、結局、党内人気投票でしかなかった。

 国民の党としての矜持ではなく、多数を頼む徒党の性根が、総裁選を制したようにしか見えない。政治家各人の断固たる意志よりも派閥(的なるもの)の力学が支配したようだ。仲間を糾合するのか、トモダチパッチワークをするのか。似てはいるが本質は全く異なる。

 自民党が窮地に追い込まれた原因は、旧安倍派の実力メンバーらの裏金騒動である。支持率が持ち直しそうになるたびに、裏金問題が重石となって石破内閣は苦しんだ。高市氏の勝因は、旧安倍派メンバーの全面的支持がおおいに力を発揮した。高市氏の任務は国民の信頼・支持を取り戻さねばならないが、これでは裏金議員代表という皮肉である。

 安倍内閣のアベノミクスなるアベノマスクと本質的に大差のない愚策が、こんにちの物価高・生活苦を招いた。アベノミクスは、煎じ詰めれば円安政策と株高対策であった。財政むちゃくちゃ出動で、国債はすでにGDPの2倍だ。経済安定が政権の長期化だという経験則に基づいて安倍氏がおこなったのは株高による好景気の演出であった。

 高市氏は性懲りもなく、安倍経済政策を継ぐと語る。インフレを招き、物価高で国民が苦しんでいるのは、安倍の政策のツケだ。小泉陣営が、「ビジネスエセ保守に負けるな」と主張してお詫びに走ったが、それなりに大事なところを突いている。物価は高い、株価は絶好調、市場は高市財政大盤振る舞いの期待というわけだから、この問題は国民にとっては大変な皮肉である。

 女性「初」が、全然輝かないのは皮肉だが当然である。高市氏は、格別女性の社会進出に熱心というわけでもない。従来、誤解も含めて女性といえば男社会の病弊を糺すという期待があった。高市氏はウルトラ保守、現代に生まれてきたのが不思議なくらいの保守である。和製ウォーク! 系の政策は確実に後戻りの推進力に阻まれそうだ。

 高市氏は、国民的信頼・支持回復を期待されている。総裁選挙でもお仲間意識に水を差すような発言は抑えていたが、超保守の精神を自律統御できるだろうか? 右バネ的党勢回復を図れば喝采する仲間は目立つだろうが、長期的に考えて自民党の再建に有意義ではない。むしろバクチ的である。

 高市氏が女性だから、人々には、無意識のうちに従来同様の女性観が作用するかもしれない。しかし、それは目くらまし的である。

 高市氏が順当に首相の座に就くとして、その内閣の運営・政策はバクチ的になるかもしれない。また、一方では目くらまし的テクニックが繰り出されるかもしれない。いずれにしても、高市氏がいかなる「化け方」をやってみせるか。あえて、今後の見どころを考えてみた。