筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
トランプの関税は、まさに彼が主張するMAGAの本体である。まがまがしいったらない。
交易は共存共栄・互助互恵をもって思想的柱とするが、彼は露骨に力関係をぶち込み、自国第一主義を押し出す。19世紀初めへ逆流している。砲艦外交である。紳士の国の外交ではない。
石破氏は、「国益だから安易な妥協はしない」と語る。これは、いかにも正論引っ提げて啖呵を切った趣がある。少し考えてみると、交易の在り方を押し出さず、国益を押し出したところに実はミソがあるかもしれない。
つまり、交易の在り方からすれば、トランプ関税は常識外れの無理難題でしかない。だから、筋論を前提すると、トランプが交易の在り方を思い出して筋論に立ち返らねばならない。しかし、あのトランプが「道を踏み外していました」などと反省する気遣いは無用である。
近々、トランプとしての最後通牒を諸国に送ると息巻いている。日本がそのうちの一つであれば、こちらが納得しなくても、アメリカは関税を大幅に引き上げる。見切り発車する。
アメリカが見切り発車しても、日本は了解していないのだから、極端にいえば交渉期間はエンドレスである。そうなった場合に困るのはこちらだから、「国益だと考えてやむなく妥協をする」という意味が、「国益だから安易な妥協はしない」という表現に含まれているのだろうか。
そもそも世間にはどんな交渉が繰り広げられているのかわからない。野田氏が、「石破氏が電話してでも交渉を進めよ」と進言するが、こんなものはとても進言とは言えない。交渉の実情がわかっても、とんでもない相手ではあるが、わからなければなおさら意見が組み立てられない。
政治家は、大変だ、国難だと騒ぐが、衆知を集めて、無い知恵でも出そうとするくらいの気構えがほしい。もちろん、これは一介の市民の気持ちである。従来の安直な行きがかり意識(対アメリカ)を横へ置いて、正論で押すべきはとことん押してもらいたい。
そうでなければ、日米同盟など対等どころか、屈従の悪習をさらに増やすようなものだ。日本には、山椒は小粒でもぴりりと辛いという言葉がある。
