論 考

中央銀行の使命

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 アメリカでは、トランプがFRB議長のパウエルに、利下げをしなければ解任だと恐喝まがいの圧力をかけた。世界を相手に高関税を振り回す。経済学者のクルーグマンでなくても、狂っていると言いたくなる。

 パウエルは、毅然として受け流しているが、圧力感は半端ではないだろう。

 思い出すのは、安倍と日銀総裁黒田との関係だ。中央銀行がインフレ政策をとるなど間違いだが、黒田はそれをやった。国債を10年間、桁外れに増発し続けた。日銀の保有国債残高は600兆円にも及ぶ。

 しかもインフレ2%を達成できず、ずるずると円安が進んで、いまは当時より持ち直したが、それでも142円台だ。この間、円安で、一部企業が儲けたとしても国民全体は円安の被害が大きい。

 産業界は極端な円安で、緊張を欠いたというか緩んだというか、この間どんどん沈んでいく感じで、いまだ反転攻勢の動きが見えない。

 政治家は、まさに緩みっぱなしである。そうでなくても選挙といえば税金バラマキ型になるところへ、打ち出の小槌でも握ったつもりらしく、放漫財政がまかり通っている。

 日本銀行は1997年、日本銀行法快晴のよって政府からの独立性を高めたが、安倍と黒田コンビの確信犯的なれ合いによって、放漫財政と、政治の弛緩・堕落へと舵を切ってしまった。

 ようやく植田日銀総裁となり、まともな日銀の行動へと戻すべく苦心しているのは素人が見てもよくわかる。

 FRB議長のパウエルがトランプに対して突っ張っているのは、筋からいえば当然であるが、少し気を抜けば、中央銀行の使命を見失ってしまうことを拳拳服膺しているからだろう。

 今度の参議院議員選挙では、財政問題について、国民の見識が問われる。