筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
スーパーへ行くたびに、お米の値段をのぞくのが習慣になった。買うのは2週間に一度くらい、それも2キロだけであるが、これほど価格が高止まりしているのが不思議で、政府備蓄米放出の効能があるのかどうか眺めている。いまのところ、まったく変化なしだ。
全国スーパーの平均価格では、5キログラムが4,206円、13週連続上昇という記事はもっともだ。昨年同時期の倍だから、大変な価格上昇だ。
今朝の毎日新聞に、ふるさと納税のお返しにお米を扱っていたが、品不足でおわびするやら、叱られるやらという記事があった。まあ、そうだろう。
返礼品に決めた時期は米価が安定していた。その後も、関係者としては格別の問題意識を持たずにいたと思われるが、現実はまことに厳しいものである。
農水省にしてからが、売り惜しみだと分析していたものが、どうやら生産量自体が不足していたということになった。それでも、政府備蓄米放出程度で片が付くと思っているのだから、ふるさと納税返礼品担当者がけしからんという前に、農水行政の無策を批判するのが先だ。
米穀ならぬ米国の関税問題に対する騒動もドタバタだ。赤沢亮正経済再生相が、アメリカとの交渉責任者、赤沢氏と林芳正官房長官をトップとしたタスクフォースで取り組むことになった。
当局者は、アメリカの真の狙いがわからない、と頭を抱えているそうだ。これはわからなくはない。なにしろ、トランプ自身がいちいち精緻に考えた結果ではない。はやく言えば、酒場で勝手な気炎を上げているどこかのおっさんみたいなもので、行き当たりばったり、当たるも当たらぬも、言いたい放題なのだから、真面目に受け止めなければならない当局者の気苦労は十分推察する。
それに比べると、早々、関税と物価対策で国民に一律5万円を配ろうと言い出す知恵者は、これまた行き当たりばったりで、国民第一に考えてくれていると感謝する気にはならない。正直いうと腹立たしい。
「国難」を大声疾呼して、ものを考えないのがいちばん悪い。トランプは、日本が安保ただ乗りしているという。これも、せっかくの申し出だから、わがほうのさまざまな負担・困難について、単刀直入に説明してもらいたい。石破氏は、日米行政協定を見直したいと公約していた。チャンス到来だ。
国会は、年がら年中、政治とカネ問題にしのぎを削っている。それが大事でないとは言わないが、目下のコメ騒動こそ、政治の価値が見直される絶好のチャンスではないか。地に足の着いた議論を期待する。