筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
午後遅くお便りが届いた。土曜、日曜の配達がないので、月曜日は配達が忙しいのかな。返事を書いたのが17時、最終の回収は18時だ。ポストへ投函に行く。ポストまで150メートルほど、必ず信号待ちしなければならない交差点を通るが、至近距離で重宝している。
手紙を所用のついでに投函するつもりで、出かけて帰ってくるまで忘れていたことが数度ある。ポストは、ついでではなく、投函するために行くものだ。葉書一枚携えて出かけた。
ポストに投函して時間表示を確認すると、最終回収時間の18時が消えている。よく見れば回収時間表示の18時の上に紙が貼ってある。
そういえば、ポストの維持費もそこそこかかるが、ポストによっては1通も投函されないことがあるらしい。わたしは、このポストに年間100回程度は投函する。
この町に来て3年ばかり、お付き合いらしい気分になるところが3軒ある。揚州中華レストランとお肉屋さんと洗濯屋さんだ。レストランは中国人経営で料理は本場だ。お肉屋さんの牛肉は岩手産の優れもの。洗濯屋さんは個人経営、手仕上げが丁寧である。
3軒の主人と会話するようになったのは、数回出かけて常連らしくなってからだ。それにならえば、ポストとのお付き合いは頻度が高い。黙って立っているだけだが、人間であれば相当親しい会話をかわしているに違いない。
デンマーク国営郵便サービスのポストノルドは、400年の歴史を有するが、手紙配達事業を終了する。21世紀初頭から90%減少したらしい。ポスト1500基を8月から撤去する。ドイツポストも不採算で人員整理をするという。日本の郵便事業もずいぶん以前から苦労しているが、世界中に同じような事情であろう。
土曜、日曜の配達がなくなったので、常連としては、ずいぶんまどろっこしい。回収を減らすのは、事業サイドの合理化であるが、郵便をよく使うものとしては不便さが増すので、事業縮小傾向が反転することにはなるまい。
手書きには格別の味わいがあるなどと、大上段に構えるつもりはないが、私信という範囲で考えれば、メールが増えたから手書きが減ったということではなかろう。わたしもメールを使うが、ちょっとしたことを書くのは手紙のほうがいい。手紙のほうが気持ちを伝えやすい。
昔、工場時代に、「ポストみたいにボーッと立っているんじゃない!」という叱り言葉があった。しかし、ポストはボーッと立っているのではない。投函されるのを口を開けて待っている。これからも長いお付き合いをしたい。