論 考

韓国尹大統領、憲法違反で罷免

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 4月4日11時22分、文炯培(ムンヒョンベ)憲法裁判所長権限代行が、「非請求人・大統領尹錫悦(ユンソクヨル)を罷免する」と述べた。

 突然の非常戒厳布告から122日過ぎて 尹は失職、裁判官全員一致である。

 直前の意識調査では、弾劾裁判について、罷免すべき57%、復帰するべき35%であったが、政治的支持率をみると、共に民主党(罷免主張)37%、国民の力(復帰主張)33%と接近していた。

 戒厳宣言直後は圧倒的に罷免せよという声が多かったが、極右の力に依存した保守が、街頭行動も含めて巻き返し、クーデター前夜のような危ない雰囲気でもあった。その後一進一退を繰り返していた。

 裁判所が尹支持者に襲撃されたこともあり、判決を控えたソウルは、地下鉄の裁判所近くの駅を前日から閉鎖したり、緊張に包まれたようだ。

 判決は至極明快である。

 「軍や警察を動員して国会など憲法機関を毀損し、国民の基本的人権を侵害して憲法守護の義務に背いた」。憲法守護義務違反だとする。

 「被請求人罷免することによって得られる憲法守護の利益は、罷免による国家的損失を圧倒するほど大きい」

 尹は、国家非常事態ではないのに、戒厳宣言を発したのだとする。

 傍聴券は定員の4818倍の応募があった。韓国の人々の問題意識の高さを示している。

 これから60日以内に大統領選挙がおこなわれる。