筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
トランプ関税を一言で表現すれば、アメリカが二流の、それも「問題児」国に陥没したというべきだ。これについては、今後展開する予定だ。
トランプの演説のように、関税が、米国経済を活性化させる有効な手段であるならば、米国産業は実にヤワだ。もしそうだとすれば、米国産業がそんな姑息な手段で再生するわけがない。
彼は、以前から自由貿易協定やWTOに反対で、貿易は二国間の力関係で決するべきという考え方である。非グローバルというよりも、世界経済という概念が生まれる以前の脳みそみたいである。
当然ながら、共存共栄の思想ではない。しかも共和党のかなりの連中がトランプを熱狂的に支持しているのだから救いがない。実は、これこそが深刻の核心だと思われる。
しかし、米国内がトランプ流に諸手を挙げて賛成しているわけではない。いろいろな報道から拾った要点を並べてみる。
エコノミストは、高関税は消費者に転嫁される。物価上昇を招く。そして世界を不況に陥れると批判している。米国が景気後退に陥れば、世論はトランプに対してはっきり北風になる。
米国産業界は、軒並み失望と非難の声を上げている。貿易関係者は失望を隠さない。製造業は、これ以上のリスクはないと批判する。高コストになり、投資や雇用に不具合が発生する。トランプ関税の最大目的が製造業の復活であるが、その製造業が、悪女の深情け! に辟易している。漫画である。
これは結局、国民への大型増税と変わらない。インフレに火がつく可能性が高い。バイデン時代に、FRBが、冷静丁寧にインフレを抑制してきたことが、一挙に吹き飛んでしまう。
経済学者クルーグマンは、「トランプは完全に狂っている」と切り捨てた。その気持ちには非常に共感する。
同盟国は、トランプ関税によって、表面的に取り繕っていても、アメリカ離れを起こすだろう。
日本が、下駄の雪路線を歩む可能性が高いとすれば、世界的には例外になる。あまり恰好よくない。4日、石破氏は党首会談を開催するらしいが、各党党首のグローバル度、経済通の度合いを発揮してもらいたい。降りかかる火の粉を払いのける力量を期待する。日本政治が見直されるチャンスだ。