週刊RO通信

どんくさい、シマリがない

NO.1606

 永田町界隈では、クリーンというのは清潔というより、貧乏くさい、けちくさいと解されている、と石破氏は考えていたのだろうか。世間からクリーンだと認知されることは得難い評価である。商品券配布騒動は、石破氏の個人的失点のみならず、またまた政治とカネ問題の泥沼へ引き戻してしまった。

 アメリカ大統領選挙で桁違いの大金が飛び回るのを見ていると、そのデモクラシーの大部分がカネまみれ、マネークラシーというべきだ。もちろん、それがすべてではない。世界のデモクラシーを牽引する知性が機能しているのは疑いない。ただし、いまはトランプ帝国主義とマネークラシーがアメリカ内外を混沌状態に貶めている。

 それに比べると日本のデモクラシーは、格好良くなくてもデモクラシーたろうとする世論が有効である。石破氏は、トランプ見参で精力を消耗したのかもしれぬが、どんくさく、締まりがない事態を引き起こした。

 石破氏は、1986年鳥取全県区当選で政治家人生に入り、頭角を現してからも容易に開花しなかったが、ようやく雌伏39年にして自民党総裁・総理のポストに就いた。さぞかし期するべきところがあっただろう。

 おりから自民党は裏金問題で世間の悪評紛々、率いるべき自民党は少数与党である。少数与党というのは厄介だ。法案を可決するためには、東西南北、電信柱にも頭を低くして臨まねばならない。とてもふんぞり返ってはいられない、気持ちの安らぐ時がない。

 そうではあるが、巨大与党で好き放題やったツケが回ったのである。かつて冷や飯に甘んじ、正論を唱え続けてきた石破氏にすれば、だから言わんこっちゃないという気持ちもあるだろう。

 それ以上に、苦しい時の石破頼みであるから、ここ一番、艱難辛苦の忍耐力と、驕らず学び続けてきた才能を開花させる大きなチャンスである。そのひそかな心構えがあったにちがいない。

 少数与党というだけではない。国民生活、日本経済は、いずれも不振、精彩を欠く。仮に「ニッポンファースト」と構えても、中身が伴わない。お得意の「ふるさと創生」が動き始めればしめたものだが、これまたシュプレヒコールの域を出ない。

 日米地位協定改定に着手したいが、トランプでは相手が悪過ぎる。トラブルを引き起こすとしても、とてもじゃないが、改善の方向性などまったく見えない。それどころではない。トランプが難題吹っかけてくるに違いない。

 岸田氏政権は、国際秩序維持のためと称して、アメリカのお先棒で走り回ったが、トランプ政権でアメリカべったり路線は禁じ手だ。かつて、キッシンジャーは、「アメリカの敵であることは危険だ。しかし、アメリカの友人になることは致命的だ」と立派な処世訓! を吐いた。

 トランプは初閣議後記者会見で(2/26)、「EUは、アメリカをだますために設立された。それがEUの目的であり、これまでうまくやってきたが、今は私が大統領だ」。まさに本性露呈した感だ。

 はっきり言って四面楚歌だ。そんなおり、石破氏の脳裏に新人時代が浮かんだのだろう。自民党1年生議員を集めて激励しよう。彼らが元気を出せばやがて党全体の活力につながる。そこまではいのだが。

 自分の党内基盤が弱いことも念頭にあっただろう。手っ取り早く食事会、手土産を思いついた。手土産のインパクトとしては、10万円がよかろう。食事会並み金額ではすぐ忘れられる。

 たぶん、田中角栄の実弾攻勢が年頭にあっただろう。しかし、大事なことを無視してしまった。角栄は、相手の個別事情をよく調べて、人情の機微に触れ、意表をついて、本人が直接手渡した。秘書一律配達とは違う。

 石破氏は、世間の人々の気持ちに疎くなっただけではない。同業者の人心収攬術においても未熟である。大失態である。政治家的資質として、ものごとをよく考え、人をよく見ているとは思いにくい。

 つまらぬ騒動だ。客観的に石破氏は「OUT」である。内外情勢を少し考えれば、こんなあほなことが起こせるはずはない。程度が低くてうんざりする。わが国が直面する状況を考えれば。まことに頭が痛くなる。