筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
ウクライナ訪問後の米民主党マーク・ケリー上院議員が、Xに投稿した。「米国は、ウクライナ国民を見捨ててはならない。誰もが戦争が終わることを望んでいるが、いかなる合意もウクライナの安全を守るものでなければならず、プーチンに譲歩するものであってはならない」
これに対して、マスクが、「あなたは裏切者だ」と書いた。下世話では、金持ち喧嘩せずというが、この人の下劣さは、トランプに劣らない。
ケリーは、「自由を守ることが米国を偉大にし、米国民の安全を守り続ける基本的理念であることを理解していないなら、理解している私たちにまかせたほうがいい」と反論した。
これについて、共和党下院議員のドン・ベーコンが、「私とケリー議員の間では意見の合わないこともあるが、私も彼も相手を裏切者と呼ぶことはない。ホワイトハウスにとってイメージダウンだ」と語った。
ウクライナを今日のような事態に追い込んだのは、アメリカの歴代政権が執った政策の帰結である。自由を守るというアメリカの思い込みについての深刻な反省と検証が必要なことは言うまでもない。
しかし、いまはその大問題には触れない。マスク発言が、ホワイトハウスにとってイメージダウンだという主張を共和党議員がおこなったことを、わたしは評価しよう。
トランプ登場以来のホワイトハウス、いや米国政治はイメージダウンが甚だしい。仄聞するに、市民相互に猜疑心や不信感が支配しているという。アメリカ人は哲人ではないにしても、率直に語り合える気風だと、わたしは見ていたので、現在の事態は、以前からすれば想像を絶している。
政治の中枢であり、民主主義の象徴のホワイトハウスで蠢く連中が、トランプを筆頭に民主主義の精神をどんどん破壊しているようにしか見えない。
政治の議論から礼節を抜いてしまったら、良識は雲散霧消する。