くらす発見

梅に目白

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 昨日出かける際、近所の紅梅・白梅が満開で目を奪われた。今年はとくに鮮やかに咲いている。白梅の間を、目白が二羽ちょんちょん移動しつつ蜜を吸っている。しばらく見惚れた。

 もう75年以上前、祖父が目白を二羽竹籠で飼っていた。祖父はかなり重篤の喘息で、庭に面した日当たりのよい部屋に閉じこもっていた。祖母からわたしは音を立てないようにきっちり言い渡されていた。

 わたしは祖父の部屋の隣室のはずれにある廊下が陣地であって、そこで本を読んだりおもちゃで遊んでいた。祖父は、毎日、縁側に出てすり餌をすり鉢でごしごしやっていた。目白の鳴き合わせというのが楽しみだったのだろう。甲高い声が聞こえたような気がした。

 忽然、すっかり忘れていた光景を思い出した。竹籠の中と違って、青空の下の白梅の間を動き回るのは、やはりのびやかで気持ちがいい。紅梅のほうはいない。

 梅に鶯というが、あれはどうも実際とは違うらしい。目白は雑食で、花の蜜や果実を好む。鶯は、虫や木の実を食べるそうだ。目白は警戒心が薄いが、鶯は警戒心が非常に強い。どうも、梅に目白が正しいみたいだ。

 鶯が梅と無縁ではないようだ。隋の江聡という詩人が、「梅花落」という詩に梅花隠処隠嬌鶯と書いたらしい。梅花は隠す所になまめかしい鴬を隠すという、たいした詩なのかどうかはわからないが、警戒心が強い鴬が隠れているというのはわかる。

 その詩から、梅に鴬、梅は白く咲き誇り、美しくかわいい鴬がいる。取り合わせの妙をいう、名場面が作られたらしい。

 そういえば、以前、京都東山で友人が経営するホテルに宿泊した際、椿の花に小鳥が群がっていた。鴬かと思ったが、目白だったに違いない。

 あまりにたくさん群がっているので、じっくり見る気にならなかったなあ。