筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
イスラエル大統領のヘルツォグ氏が国連で、「国連総会は反ユダヤ主義に立ち向かっていないから道徳的に破綻している」と抗議した。さらにICC(国際刑事裁判所)が、ネタニヤフらに逮捕状を発行したことを偽善だとも言う。
2023年10月に、パレスチナのハマスがイスラエル攻撃をして殺害と誘拐事件を起こした。ハマスはテロリスト集団であり、それを国連総会がこぞって糾弾せず、イスラエルのパレスチナ攻撃を止めるように勧告していることが反ユダヤ主義だと批判する。
言葉上は極めて明快に断定しているが、2023年10月の事件が引き起こされた理由を直視すれば、イスラエルの反ユダヤ主義攻撃は牽強付会の説だと逆に批判されざるを得ない。
1946年の建国前後から、イスラエルは一貫してパレスチナの人々に対して弾圧や圧迫を加え続けてきた。パレスチナは、イスラエル的植民地主義の攻撃に常時さらされてきた。
イスラエルは、先住民たるパレスチナ国家を認めず、実力支配している。話し合いに応じないイスラエルに、パレスチナは絶望的状態に置かれている。
だから、テロリスト呼ばわりされているが、ハマスはパレスチナの独立運動を戦っている。わかりやすくいえば、かつてアメリカが先住民を駆逐して自分たちの国をつくったのと同じことを、イスラエルは現在に至るまで約80年間継続している。
イスラエルは、ガザの攻撃の実態はテロリスト排除と繕っているが、女性・子どもの被害が大きい。病院、学校、避難させた土地まで攻撃している。ジェノサイドにしか見えない。しかも、国連職員も、報道陣も攻撃している。
ユダヤ人がナチの残虐な仕打ちを受けたのは事実であるが、だからといってイスラエルがパレスチナに対して何をしてもよいということにはならない。
イスラエルが、ユダヤ主義が大義だとするのはもちろん勝手である。しかし、反人道的、非人権的な暴虐を、ユダヤ主義によって浄化することはできない。
イスラエルの暴虐は、アメリカの後ろ盾があってこそ可能である。つまり、ウクライナの植民地主義をアメリカが支持することによって、アメリカの世界的信用はがた落ちだ。
国連総会が道徳的に破綻しているのではない。イスラエルがそうなのだ。イスラエルは虎視眈々停戦を破ろうとしている。それを阻止するのは、国連活動しかない。歪んでいるのはユダヤ主義である。