筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
韓国大統領尹氏が、非常戒厳宣言を発した。
2022年大統領に選出された尹氏は人気が20%で低迷している。この4月の総選挙では野党の共に民主党が過半数を獲得した。野党主導で国会が進められ、来年度予算は大幅に減額されて可決した。
また、野党主導で、官僚が22件の多数にわたり弾劾訴追を発議されるなど行政府がマヒしているという。
尹氏の戒厳宣言によると、かかる事態は野党が内乱を画策しているのであって、反国家行為である。国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった。民主主義体制を守り、北朝鮮から守るために、憲法第77条に基づいて「非常戒厳宣布」すると語った。
1987年民主化宣言以来、初めての戒厳令である。
23時に戒厳司令官は戒厳布告令を発した。これによると、集会・デモなど政治活動禁止、メディア・出版などが統制をうける。
野党の李在明代表はもちろん、少数与党の韓東勲代表も直ちに「大統領は間違っている。国民とともに阻止する」と語り、市民、議員が続々国会に集まった。
4日1時、国会は戒厳令の解除を求める決議を与野党190人全員で可決した。韓国憲法によると、在籍議員の過半数が戒厳令解除を求める動議を可決すれば、大統領は戒厳令を解除しなければならない。
22時25分に大統領が戒厳令を発したが、1時には解除されことになるので、メディアは「2時間35分の戒厳令」と報じてもいる。
軍は、大統領の解除が出るまで戒厳体制であるが、議事堂からは撤収したようだ。
大統領と野党との対立関係だけではなく、与党の韓氏との関係も葛藤を抱えていて、関係復元は難しいと見られる。これについて、メディアはとっちもどっちで、人間的包容力を欠くと切り捨てている。大統領夫人の金建希氏のスキャンダル問題もある。
メディアは、経済がガタガタ、低成長。多重債務に苦しむ事業者は178万人もいる。にもかかわらず、大統領も議会も仕事がしっかり出来ていない。議員は、自分が議員でメシを食べることだけに専念している、と厳しく批判している。
大統領が戒厳令を発したことを巡って、これからどんな動きが起こるのか、議会決議ですんなり収まるだろうか。外から見れば、非常にわかりにくいが、韓国の政情がきわめて複雑、剣呑になっていることはわかる。
**4日未明、尹大統領は閣議で非常戒厳令を解除した。