論 考

勝ったのは有権者だ!

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 与党の自民・公明が過半数割れ。立民は98議席から146議席へ、国民は7議席から28議席へ、れいわは3議席から9議席へ。維新は全国展開路線が頓挫した。公明、共産は支持者の高齢化が目立つ。

 きのう終日、わたしはやきもきした。投票率が伸びない。これでは報道各社の自公過半数微妙という予測が外れるのではないかと思った。

 しかし、開票が始まると同時に立民候補の当選が伝えられたのを皮切りに、与党過半数割れが現実になった。

 各政党の勝因・敗因など、さらに分析が進むだろうが、今回の衆議院議員選挙の勝利者はなんといっても有権者である。

 従来、投票率が低いと与党に有利というのが定説だった。先回よりさらに支持率が下がりつつも、野党が大きく伸びた。とはいうものの、野党に対するブームが起こったのではない。表面的には淡々と投票が終わってみれば、大きな変動が発生した。

 従来、投票に行きましょうと誘うと、「投票しても、しなくても同じだ」という見方が支配していた。今回は、清き1票が自民一強といわれ続けた事態をひっくり返した。これは大きい。投票した人も、しなかった人も「おっ!」と思ったにちがいない。

 しかも、野田立民は野党共闘を掲げたものの成立せず、下馬評では自民党に利すると心配されていた。ふたを開けてみれば直接的な野党共闘がなかったのに、野党が大幅に躍進した。

 「裏金批判」が奏功した。「手取りを増やす」という主張がわかりやすかったなど、すでに勝因分析もどきの話がある。しかし、こんな言葉だけで人々が動いたりするものか。そんなことは政治家に煽ってもらわなくてもわかっている。

 政治家の言葉に踊ったのではない。その証拠にブームらしきものはほとんどなかった。いわば、有権者1人ひとりが、自分の見識を箱に投じただけである。

 選挙戦の勝敗にかわらず、各政党は、自分たちの言葉が人々を動かした、あるいはうまく動かせなかったのだ、と錯覚しないほうがよろしい。有権者が本気で考えれば、50%そこそこの投票率であっても選挙を動かせる。

 選ばれるほうが引っ張っているのではない。選ぶから結果が出る。わたしは、今回の選挙について、勝ったのは有権者であることを強く主張する。