筆者 渡邊隆之(わたなべ・たかゆき)
2024年10月1日から主に高齢者を対象に新型コロナワクチンの定期接種が始まる。重症化リスクの予防を目的にインフルエンザ同様、主に高齢者を対象とする定期接種となった。接種期間は10月1日から翌年3月末まで。対象者は①65歳以上、②心臓・腎臓・呼吸器疾患や免疫不全等重い基礎疾患のある60歳から64歳。年1回の接種で、費用は自治体によって異なるが対象者の個人負担は3000円程度といわれる。それ以外は任意接種となりワクチン代含め1万5000円程度となるそうである。
ところで、今回は5社のワクチンが採用されたがそのうちの1つ、次世代型mRNAワクチン(レプリコンワクチン コスタイベ筋注用)についてその安全性と倫理性の点で医師はじめ有識者や一般社団法人日本看護倫理学会等が懸念表明をしている。
従来のワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体を弱毒化したものやその成分を抗原として接種しヒトの免疫応答を誘導するのに対し、遺伝子操作型ワクチンであるmRNAワクチンは、当該抗原 (スパイクタンパク質)をヒトの細胞内の遺伝機構を用いて作らせる点が大きく異なる。
レプリコンワクチンは、これまでのmRNAワクチンの抗原産生機能に加え、自分自身を複製する機能があり、少量の接種で長期間スパイクタンパク質を産生できる点でメリットがあるという。これはアメリカのArcturus Therapeutics社で開発され、ベトナムで大規模治験がなされ、日本の Meiji Seikaファルマが製造・販売する。
ここで一番気になるのは、開発国でも先行治験国でも認可しないワクチンをなぜ唯一日本のみが認可したのかという点である。政府から認可の経過について十分な説明がなく安全上の懸念が払拭できていない。
また、自己複製型ワクチンであるためレプリコンワクチン自体が呼気や汗等を通じて接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念もある。感染性をもたせないように設計されているとのことだが、この点についての臨床研究は皆無とのこと。非接種者にワクチンの成分が取り込まれてしまうおそれがある点で倫理的な問題があり、10月からの定期接種が感染有無確認の臨床研究になってしまうのではないか、との懸念がある。
さらに、将来的な遺伝情報等への影響などでの安全上の懸念、医師が接種者に十分な事前説明をできないことの懸念、患者のためにと接種勧奨や同調圧力により医療従事者が接種を促されることで、かえって医療従事者自身が感染経路となってしまうのではないか、との懸念もある。
今年の6月にHIV薬害訴訟の被害者でもあった川田龍平議員が国会で質問主意書を提出しレプリコンワクチンは判明していない点が多い以上、使用中止が賢明なのではと意見を述べている。
この度のワクチン騒動について、いままでTVや新聞での報道はほとんどない。筆者が定期接種対象の方々にお話を伺うと「知らない」という方が100%だった。ワクチン接種するか否かの判断材料を政府が十分に開示しないのはおかしい。
ネットで検索すると、個人の開業医や美容室ではレプリコンワクチン接種者の来院、来店お断りの告知をするところもある。シェディング等詳細なリスクが判明しない以上、従業員や他のお客を守れないからとの理由である。この対応は差別なのか、それとも合理的区別なのか。ネット上で大きな問題となっている。
この点、製造販売承認を受けたMeiji Seikaファルマは専門家の非科学的な主張に対して法的措置を含め厳正に対処するとしているが、同社の現役社員の内部告発本でmRNAワクチンの危険性をリサーチした『私たちは売りたくない!』は9月18日発売早々ベストセラー1位になった。従来型mRNAワクチンを接種し26歳で突然亡くなった同僚への想いから書かれた書籍である。このような安全性への疑念、国民間での対立を生んだのはすべて政府の説明責任の懈怠にある。
今回のワクチンの開発国がアメリカであり外圧があったのかもしれない。しかし、国民の生命・身体・財産を守るのが国家の役目である。昨年9月に日本の治験のあり方につき、厚生労働省医薬局の中井清人医薬品審査管理課長は「日本を魅力ある治験市場にする政策に変えていく時代だ」と述べている。しかし、誰にとって魅力的なのかによって話の内容は大きく違ってくる。
他国ではmRNAワクチン接種を早期にやめ後遺障害等につき大きな議論になっている中、日本では接種を重ね、多くの副反応被害者や認定死亡者が出ている。その検証結果も国民に十分に公表されない。泉大津市の南出賢一市長は市のサイトやyoutubeを通じてワクチン接種に関するリテラシーを高めるよう詳細なメッセージを出しているが、これは本来政府が出すべきものであろう。
筆者は決してワクチン接種反対派ではないし、疾病の重症化予防という目的には異論はない。しかし、治験者や接種者が十分にその内容を理解しないまま被害のリスクを甘受するのはあまりにも個人の自己決定権を蔑ろにするものであり納得ができない。定期接種実施直前に問題視されるという点も由々しき事態である。
ワクチン被害の問題は接種者ご本人のみならず、それを支えるご家族のライフプラン、キャリア形成にもかかわる問題でもある。ワクチン被害者が出ることが新たなヤングケアラー・ビジネスケアラー・介護離職等の発生につながるということに政府関係者はどうして思いを馳せることができないのだろうか。
かつて世界中でコロナが蔓延していた時の台湾政府の説明責任は見事であった。日本政府には、人命にかかわるワクチン行政に関するプロセスの透明化を望みたい。