筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
兵庫県知事・斎藤某のパワハラに関する百条委員会が開催された。予想したことではあるが、取ってつけた辻褄合わせの弁解である。
やがてしかるべき結論が出されるだろうが、わたしは異なる視点から斎藤某の知事職辞任が相当だと主張する。
斎藤某は、指摘されるパワハラ内容が職員の指導だと語るが、いったい、知事の仕事、とりわけ特別職公務員の立場をどう考えているのか。
知事職も県職員も公務員である。公務員が奉仕するのは県民である。たまたま知事に当選したとしても、公務員内部で、お殿様になったのではない。
今回のような些末な話で職員を指導したいのであれば、いちいち口がくたびれるようなまどろっこしい指導をせずとも、毎朝、自分の足で当庁して、黙って便所掃除でもやればどうか。心がけ・気配りの立派なお人柄として職員の尊敬を集めるのは間違いない。
職員は、県民に奉仕するのであって、知事に奉仕するのではない。こんなことがわからないで知事になったのだから、愚行を重ねるのは当然だろう。
大昔、わたしは兵庫県の某市で労働者代表として市の労働視察団に加わった。団長は古手の市会議員だが、仕事は訪問先で退屈な挨拶をする程度。ありていにいえば観光旅行に近い。ところが、随伴の市職員に弁当買ってこい、あれをやれ、これをやれの連発である。
「あんた、弁当くらい自分で買いなさいよ。職員といえども市民だし、地域の組合役員をしているわたしからいえば、組合員ですよ。つまらぬ注文はやめてください」と、わたしは文句を言った。レポートも職員が書く。弁当買ってサービスするのは議員じゃないか。
選挙に当選すれば、えらくなったような錯覚にはまる連中が多い。いまでも大して変わらない。それでいて拍手したくなるような仕事をしている知事・議員が多いわけではない。
告発によって、すったもんだはまどろっこしい。その場で対等に問題指摘することができればいちばんいい。官庁にかぎらず、組織は仕事を効果的におこなうために上下関係がつくられているのである。上位者の気持ちがよくなるためにあるのではない。上下関係に委縮しない組織文化をつくりたい。
パワハラはもちろんけしからんが、知事職をお殿様と心得違いするような輩は可及的速やかに辞めさせるべきだ。