論 考

論議の向上を公約せよ

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 自民党総裁選候補者全員に表明約束してほしいことがある。

 議会審議を尊重することだ。たびたび繰り返すが、多数を制していても他派の意見を無視してはならない。

 こんなことは民主主義のいろはのいだ。しかし、自民党歴代の首相、とくに安倍氏以降の首相は議会軽視が目に余る。いい歳こいて、お山の大将気取りである。

 自派の主張がベストで、その他は顧慮するに値せずという態度は、民主主義を根底から捻じ曲げてしまう。

 多数派だろうが、少数派だろうが、提起された主張は、お互いの問題意識を確認することから始めて、もっともふさわしい解はなんであるか。それを生み出すために論議するのである。

 今回の総裁選には、多数が手を上げると予想されているが、いまのところ、議会審議の活性化を主張する人がいない。

 自他の主張を交換して、相互の主張以上の価値を引っ張り出すためには、相手の主張を潰すための議論をしてはならない。相手の主張の大事なところを傾聴するのが何よりも大事である。

 半世紀以上前、高校時代に恒例クラス対抗討論大会が開催されていた。詭弁だろうがなんだろうが、相手を黙らせてしまったほうが勝利するという、まったく程度の低いものだった。

 日本人はディベートが下手だといわれるが、異なる主張を止揚して最適解を求めるという、至極当たり前のことがわかっていない。

 国会の議論を聞いていると、いつもわが高校時代の苦い記憶が蘇ってしまう。

 学校で議論を教える際、見本は国会にありといわれるようになってこそ、政治家としてのプロである。