NO.1576
朝日新聞が、ニューヨークタイムズ6月15日付記事、「ロシアによる(ウクライナ)侵攻直後の和平交渉文書」を、8月11日(日)、15日(木)に掲載した。これによると、ロシアが2022年2月のウクライナ侵攻直後から両国は和平協議を進めていた。しかも、和平目前まで到達していた。
その文書は、双方の提案の相いれない部分や合意点が示された、2022年3月17日と4月15日付の条約草案と、同3月29日にトルコのイスタンブールでおこなわれた会談で作成された非公式コミュニケと呼ばれる協定案の要約版である。これらは、ニューヨークタイムズが、ウクライナ、ロシア、欧州諸国の取材で入手し、数か月かけて、ウクライナ、ロシア、西側諸国の関係者などにインタビューし、検証した内容だとする。
2022年4月中旬から下旬には、平和的解決によって戦争を終結させる直前まで近づいていた(ウクライナ交渉団の1人)という。同2月28日の交渉で、ウクライナ側が死亡ロシア兵3千人だと指摘すると、ロシア側は、わずか30人だと応じた。ロシア側交渉団は、ウクライナの反撃でロシア軍がこうむった実情を知らなかったようだ。(ウクライナ側交渉団)
ウクライナ側は、NATOに加盟することも外国軍のウクライナ駐留を認めることのない永世中立国になる用意があると表明した。これは、プーチンが、西側諸国はウクライナを利用してロシアを破壊しようとしているという、不満の核心に応じたものである。
オンラインでも定期的に交渉がもたれた。3月17日付の条約草案では、ウクライナがロシアに対して、国際的な「安全の保証」に同意するよう求めた。保証とは、ウクライナが再び攻撃された場合、和平協定の調印国となるウクライナの同盟諸国を含む国々がウクライナを防衛するという内容だ。
ロシア側交渉団は、ウクライナを含む調印国のすべてに対して、2014年以来の対ロシア制裁を解除するとともに、その他の国にも同調するよう呼びかけることを求めた。
条約草案には、ウクライナ軍の規模や、保有できる戦車、砲台、軍艦、戦闘機の数の制限が含まれていた。ウクライナはそれらの上限を受け入れる用意はしていたが、(当然ながら)より高い水準の設定を求めた。
アメリカ政府関係者らは、草案に盛り込まれた諸条件に警戒感を抱いたので、ウクライナに対して、それが武装解除になることを示唆した。また、同年3月24日のNATO首脳らの会談では、3月17日付文書に賛同するものはいなかった。
わたしは、ウクライナ戦争が長期化した理由がどこにあるのか考えるために、この長い記事を読んだのだが、どうもすっきりしない。両国の交渉を眺めると、どちらも長期化させようと考えていなかったようだし、交渉の中身が箸にも棒にもかからないほど隔たった内容ではないように思う。
いったい、誰が和平に傾いていたものを泥沼の戦争へ押しやったのか。記事の中身が煮え切らない(ように思えてならない)。わたしの想像では、和平にあと一歩まで近づいていたものを覆したのは、ウクライナを後押しする欧米ではなかったのかという、疑問を捨てきれない。
従来の報道では、ウクライナが断固戦うというので欧米が武器など提供して支えてきたように解釈していたが、そうではなく、むしろ欧米が、民主主義対プーチンロシアの「宿命的対決」という物語を作ったのではないか。
もちろん、侵略されているのはウクライナだから堪忍袋の緒が切れてとことん徹底的に戦うという考えになったとしても不思議ではない。しかし、いかに欧米が支援したとしても現実に戦争するのはウクライナだけであり、一発大逆転の僥倖に賭けるのはあまりにも無謀である。
欧米がウクライナを助けるのではなく,憎いロシアを弱体化させることが第一義であって、その尖兵にウクライナが泥沼の戦争を続けることになったのではないのか。進も引くもウクライナ次第というが、それは、欧米の誰も本気で事態解決の主導権を発揮しないことと同じである。
最後に、ニューヨークタイムズの記事を丸投げ報道するのではなく、朝日新聞の分析・検証があっても罰が当たらないことを指摘する。
