筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
NATO首脳会議が、「ウクライナのNATO加盟は不可逆」宣言を発した。
ロシアがウクライナ侵攻した大きな理由が、ウクライナのNATO加盟阻止・中立・非軍事化による欧州とロシアの緩衝地帯にすることであったから、ロシアの目論見は限りなく遠のいたことになる。
ところでプーチンは、ウクライナがNATOに参加すれば、ロシアを攻めてくると思っていただろうか。実は、攻める可能性があるのは、自分自身であって、ウクライナやNATOが攻撃してくるとは考えていない。
ウクライナのNATO加盟が実現すれば、プーチンのロシアがウクライナを攻撃した場合に、NATO全体を敵に回すことになる。
しかし、すでにプーチンはウクライナに侵攻し、それなりの戦果を挙げていると自負しているだろう。
ウクライナのNATO加盟が不可逆だと宣言して、これは加盟に向けた架け橋だと解説したところで、現実は未加盟であり、ロシアが直ちにNATOの反撃を食らうわけではない。
問題は、ウクライナのNATO加盟不可逆宣言が、現実のウクライナ戦争にいかなる効果があるか。プーチンに対していかなる圧力になるか。直ちに撤兵するから加盟不可逆宣言を引っ込めてくれという取引を持ち掛けるなんてことはあり得ない。つまり、対プーチン効果は期待できない。
一方、ウクライナはNATO加盟があと少し、加盟できない心配はないと安心するだろうか。たぶん、ウクライナにしても、なにも変わらないと思うだろう。当面の戦局を打開する期待はない。
しかもウクライナとって戦局は利あらず。米国の戦闘機F16がはじめて供与されること、2025年も400億ユーロ(7兆円)支援が決まったことくらいである。
ウクライナにすれば、ウクライナ戦争に直接NATOの介入がほしい。自力で戦える力の余裕は加速度的に減少している。
そこで、1つの見方として、NATO加盟が確実になったので、その後は、万一攻撃されても戦力の後ろ盾がある。ならば、ここでいったん戦争休止して、再起を期すほうがよい、とウクライナが考えるのではないか。
しかも、ゼレンスキー氏が命綱としたバイデン氏に今後も期待をかけられない。トランプが次期大統領になれば、現状より支援が増える可能性はない。トランプはNATOの存在意義など理解していないから、米国とNATOの軋轢が増すのは必然である。とすれば、いまを逃すとますます事態は悪化する。
だから、ウクライナが方向転換するきっかけになる(のではないか)という期待である。
ウクライナを支援する各国は一年中会議を開催している感だが、事態を動かす力がない。下手をすると世界大戦への危惧が大きいからだ。
しかし、軍事力以外に、たとえば、水面下でプーチンと折衝しているのだろうか。表向きの会議で派手な言葉が活用されるのは、要するに、解決への実態が動いていないからであろう。
リーダーの役割を演じることは可能だ。しかし、それが本来のリーダーであることはきわめて稀である。しんどい時代だ。せめて、事態を直視して、自分なりに考え続けよう。
