論 考

政治は人気稼業なんだ

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 都知事選の投票率60.62%。小池百合子291万8015票で当選、石丸伸二165万8363票で次点、蓮舫128万3262票であった。懸念された投票率は結構伸びた。

 蓮舫氏が200万票以上は獲得する、次点以上だろうと予測していたが、外れた。石丸氏の大活躍は瞠目に値する。新しい政治リーダーが登場した感。蓮舫氏の得票を食われたという分析もあるが、無党派層を開拓した石丸氏の力である。

 蓮舫氏の得票が伸びなかったのは、政党としての基礎票から考えると不思議ではない。小池氏が自民党を抜けているか、抜けていないかはともかく、自民党の裏金事件と別だと見られるなら、自民・公明・都民ファーストの合計票は立憲の基礎票をはるかに上回る。同時におこなわれた都議補選でも、立憲は1人しか当選させられない。

 蓮舫氏に期待したのは、自民党裏金事件への憤まんをフォローにできるという目論見があってこその人気沸騰だから、他に、人気を押し上げるようななにかがないとすれば、得票はこんなものであろう。頼みの風が吹かなかった。

 立憲と共産党との共闘が票を逃したという説は賛成できない。共産党の基礎票を除いたら、いまよりたくさん得票できたという理屈は証明できない。むしろ、共産党との共闘のおかげで、蓮舫氏を支持したくない連合などが都合の良い理由を見つけたという程度である。ブームが起きていれば、そんな話はぶっ飛ぶ。

 石丸氏がSNSを効果的に駆使し、どんどん支持者を増やした背景には、自民党だけではなく、与野党ひっくるめて既存政党に対する不信感を抱いている人々が石丸氏に共感したと考える。つまり、既存政党が拱手傍観している無党派層を、石丸氏が動かしたという事実を大事にしたい。

 自民党はろくでもない政党だと思っていても、それが直ちに野党支持に流れるわけではない。与党の敵失が大きくても、それだけに依存したのでは流れを変えられない。実際、自民党支持率が下がっても、野党の支持率が反比例して上がらない。

 ネットを効果的に駆使できるかどうかも大事だが、その前に、たとえば立憲民主党が、かの「枝野がんばれ」コールが起きたときのような、人々の人気を持ち合わせているかどうか、考えてみればよい。

 立憲はじめ野党には、良薬は口に苦しの選挙であったと認識してほしい。