論 考

年中フールの見本

筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)

 エープリルフールという言葉はもはや死語になった。なにしろ、内外通年フールだらけである。罪のない嘘、いたずらを楽しむ余裕はなくなった。

 先日、かのトランプ氏が「聖書」を売り出した。出来損ないのパロディーといえなくもないが、価格は59.99ドル、ざっと9000円ほど。

 表紙にGod Bless the USAと印字してあるそうだが、おそらくGold Bless the USAと間違えたのだろう。

 トランプ氏は自称熱心なカトリックというが、腑に落ちない。

 モーセの十戒の3番目に、――あなたは、あなたの神、主の名を、みだりに唱えてはならない。主は、み名をみだりに唱えるものを罰しないではおかないであろう――とあるからだ。

 販売目的は資金稼ぎ、カネさまの道具に神さまを使うのだから、信者でないものから見ても、冒涜であり、真面目に信仰する人を馬鹿にしている。

 名声を得ることと、金儲けには特異な才能を発揮するトランプ流だ。

 しかし、嘘を語ってもトランプ氏を支持する多数の人々の価値観はどうなっているのか。儲かればいいのよ、というだけなんだろうか。