筆者 難波武(なんば・たけし)
中国の施耐庵(14世紀)が著したという『水滸伝』は昔から大いに人気を博してきた。盗賊宋江ら梁山泊に集まった108人の豪傑が縦横無尽の大活躍をする長編小説で、読まれた方が多いだろう。
欧州では、ピカレスク小説が16世紀に登場して17世紀に大流行した。ピカレスクはスペイン語でならずものの意味である。下層階級出身の主人公、召使や詐欺師がいろんな事件に遭遇した体験を物語る。
有名なものでは、シラー(1759~1805)の戯曲『群盗』がある。伯爵家の長男カールが、弟の策謀で転落させられるが、強盗団の首領になって世直しするべく活躍する。ゲーテ(1749~1832)やシラーが大活躍した文芸運動疾風怒濤期の記念すべき作品でもある。
ならずものや群盗が小説・戯曲で大衆の圧倒的な支持を受けた。泥棒や強盗が歓迎されるのではない。はからずもアウトローの立場になった登場人物が自分の利益のためではなく、いわゆる義賊として行動し喝采を集めた。
自民党にも五人衆なる群盗? がいるが、こちらはとてもピカレスクにできないようなみみっちい裏金つくりで、天下の批判を浴びている。
政治家という志が高い(はずの)人々が、なんともはや、群盗の足元にも及ばない。秘書や会計責任者に押し付けず、自分たちが責任を取るくらいの気風がないのだから、政界リーダーで収まってもらうわけにはいくまい。
大切なのは人間味でありましょう。