くらす発見

頭の中に原稿を書く

筆者 難波武(なんば・たけし)

 なかなか熟睡できなくて困っている。少し体調が低下したのでなおさら焦る。羊をやっても、数字をやっても、呼吸を整えてもダメなのだ。

 若いころは寝床で文庫本を読んだ。退屈で眠くなるどころか、目と頭が冴えて1冊読み切るまで眠れなかったことも少なくない。寝床読書は睡眠の邪魔をするので最近はやらない。

 読書でなく、原稿を書いたらどうか。スムーズに進まず、くたびれて眠るのではないか。これは当たった。スムーズに原稿書きが進んで、愉快になり、眠れないという不快感が解消した。

 年初から何枚も書いた。われながらいいじゃないかと呟いたりする。ペンもキーボードも使わないぶん、納得できるまで書く。しかも、目が疲れない。

 最大の欠点は、朝になって記憶していないことが多い。さっぱり思い出せない場合もある。もともと記憶力がよろしくないので、仕方がないのではあるが、ひょっとして書いている夢を見ているのではないのか。

 今晩は、それを確認するために起きてキーボードを叩いた。まあ、短いものだから記憶は確かだったが、すっかり目が覚めた。

 これからは、朝になって記憶していなくても可としよう。案外、頭のトレーニングになっているかもしれないから。