論 考

落語でない、落ちた話

 この夏に前日銀総裁の黒田氏が非公開の勉強会で、国債増発や借金膨張の問題を指摘した。参加者は無責任だと白けたそうだ。当たり前だ。

 安倍政権のもとで、ジャンジャン国債増発して、にっちもさっちも動けない状態を作り出したのは黒田氏である。ただいまは教鞭をとっているらしいが、自分がやったことの反省を一つとしてせず、かつて自分が大反対した側の理論にくら替えするのは、どういう心境なのか。

 反省しないならくら替えできない。まして反省したなら、人前で御託を並べることはできない。

 いまさらではあるが、国債大増発の最初から反対してきたものとして、わたしは、黒田氏の人格を疑うしかない。

 安倍氏以来、急速に言葉の信頼感が薄れたが、これもその事例だ。

 ついでにいえば、黒田氏を招いた方々はなにが聞きたかったのか。まったく支持していないのに、招くことはなかろう。つまり、諸氏は、黒田路線を歓迎していたのではないのか。

 その流れで言うと、黒田氏は言外に、「あんたらの期待に沿ってやったんだが、本当はこんなことは危ないので、いざというときに上手に逃げなさい」と言ったのかもしれない。なにをかいわんや。