論 考

扇動者

 朝日新聞朝刊にちょっと気になる記事あり。戦時中の話である。

 1931年の満州事変を引き起こし、日本を15年戦争に引っ張り込んだ石原莞爾(1889~1949)が、1943年2月、取材に来た朝日の記者に、「朝日は戦争反対をやらんか」とけしかけたそうだ。

 朝日の記者が、「そんなことをすれば朝日が潰される」というと、「潰されたって戦争が終われば(先見の明のある)朝日の評判が上がって、盤石の新聞社を再建できる」と語ったそうだ。

 つまり、石原はすでに大東亜戦争は敗北必至と読んで、反戦のムードをつくろうとしたとも読めるのだが——

 わたしはこんな事実は知らなかった。先を読むことに敏な人物であったが、小賢しい印象が抜けない。そもそも対米戦争など勝算がないにもかかわらず、世界最終戦論をぶち、人々の好戦ムードを煽った人物である。

 扇動者列伝の1人であろう。