論 考

外交の信頼性

 中国の秦剛外相更迭は、外務部が一切質問に答えないので真夏のミステリーめいている。当然ながら報道は内外すべて、憶測を積み重ねているが裏付けがないから説得力がない。

 健康問題やスキャンダルがもしあったとしても、それは単なる引き金だろう。外交路線変わらず――という予想は、時間が過ぎないとわからない。

 以前なんども訪中、両国有志で討論会を開催した。長いお付き合いの日本生まれ育ちのベテラン・ジャーナリストLさん(故人)が、「わたしは中国外交部を絶対に信頼しています」と語った。

 きわめて自然にスピーチの文脈で出てきた言葉だ。形式主義や追従を言う人ではない。わたしは、わが外務省について逆だから、いつまでも忘れられない。(単なる不祥事問題ではなく、諸国に対する公正な見方に疑問がある)

 中米対立が解凍の兆しを見せない。二国間にとどまらず、両国の世界観の問題である。もちろん、いずれも持論を容易に変えるような質ではない。

 だからこそ、外交路線の動向は大きな関心事である。わが報道においても、慎重に取り扱ってほしいし、報道の受け手としてもよくよく考えたい。