論 考

早朝の電車

 混雑が嫌いなので早朝に駅へ出る。真夏、朝の陽ざしが比較的やわらかなので心地よい。

 あの人、この人、知らない人だがいつもの位置に座っていて妙に親近感が湧く。目を閉じている。堅く閉じるのや、そっと閉じるのはずいぶん違う。みなさん、とても堅く閉じていて、閉じている表情が苦悩に支配されているみたいで、気になる。本当のところはわからないが。

 職場の朝の挨拶がおはようではなく、お疲れさまになるのも無理ないか。

 目を閉じることは効用大である。ちょっとその気になると、考える宇宙が無限に広がっていて、吸い込まれそうになる。(まあ、それほどでもないが)

 cogito,ergo sum――の偉大さ深遠さを感じるときだ。

 大昔、登山家は、そこに山があるから登ると語った。しかも、高い峰に登頂するのは偉業である。しかり。

 ところで、人生というのは山か川か谷底かわからないが、ここにあるから生きていく。これもまた偉業である。それの同行者がcogitoだなあ。